ちっこいはなし

たのしいせいかつ

裂傷

たくさんの下書き。
もう、その時何を考えて書いたかも覚えていない。
デジタルは少し残酷だ。消しカスも、跡も残さずに消してしまえるんだから。とっくに自分から出て行って、もう帰ることなどありはしない感情だとか言葉の痕跡を、青春の傷痕になる前に、綺麗に拭い去ってしまえる。ドライだね。
昨日の私さえ今の私ではない。今までの自分たちが仲良く線路に寝転んで、特急列車に轢き潰されていく。
眠っている間、私はどこにいるのか。目覚めた時の私は眠る前の私と同一人物か?スワンプマンについて考えると夜が更ける。
この文章を書き始めた時の私も、今の私とは別人だ。感情にはバックアップがないのだから、この文字の羅列を読んで何か思い出した気になっても、それは今の自分が持っている感情を使って「あの時」を追体験しているだけなんだろう。
不連続な自己。次々と挽き肉になっていった、過去の「自分」に似た誰かさん。
一つ一つのパーツが眠っている間にメンテナンスされて新しくなる。その時に捨てられた(または取りこぼした)パーツを忘れていって、新しい私が今日を生きていく。たった1分かそこらで廃棄されて、まとめて細切れの肉になる私が。そしてベルトコンベアーには、出荷されるのを待っている未来の「私」がぞろぞろと並んでいるんだろうか。