ちっこいはなし

たのしいせいかつ

無謀な企て

 脳裏にあの子の姿を描きながら布団の中でする身悶え。ラブソングとか恋愛小説みたいに「夜も眠れない」なんて、そんなのはないけど、ふとしたとき(例えば窓の外を眺めているとき、授業に興味が持てないとき、何も考えていないとき)に真っ先に浮かぶのは決まって彼女の顔で参ってしまう。
 でも、あれって本当にあの子そのものなのか。都合のいい妄想じゃないのか。だってあの子には他に好きな人がいるし、恋愛には臆病なタイプだし、弱虫を自認する私より傷つきやすいから。私に振り向いてくれることがないのをいいことに、好き勝手に妄想を塗りたくっていないか。恋心を糧に、頭でっかちな感情が膨れ上がって私ごと宙に浮かんでいる。
 それでもいいのかもしれない。私はあの子のことを遠くから見ているだけで幸せ。喜びに胸を弾ませて、息を切らして跳びはねてる彼女がかわいい。大好き。でもやっぱりちょっとだけ、あの子の幸せに私が与することができたら、それは無上の喜びだ。ほら、またあの子の声で耳の中がいっぱいだ。
 宙に絵の具で生きた恋人を描くような、マグリットのあの絵画みたいに、私があの子を再構成するのは罪深い。叶うなら、本当のあの子を最前列で食い入るように見つめたいんだ。身の程知らずでも。