ちっこいはなし

たのしいせいかつ

蓄音機

下校途中は全ての音が私を中傷するように聞こえる。うるせえな、何もかもろくに知らんお前らにとやかく言われる筋合いはないんだよ。まあ、何もかもろくにさらけ出さんのは私なんだが。もしかして結果的に自分が悪いことになってる?
私はその時前に進むことしか考えていない。頭を空っぽにした方が、余計な雑音を頭蓋の外に排出するのに便利だ。うざったいし。そうすれば、その内何かしらいい考えが湧き出てくる。口に住む音楽が孵化していく。
車が突っ走って行く。私は音に隠れるように小さく歌う。背中をほんの少し伸ばして。誇らしげには多分見えない。それでも胸の中が温かくなる。
前だけ向いて進めだとか、明るすぎる言葉は言えない。眩しい光に網膜を焼かれてしまうから。苦しい。背中を蹴り飛ばして、否定によって肯定してやる位でいい。
でも痛みがないと自分を肯定できない奴とは仲良くなれない。死ぬことを願って惨めに生き続ける人は苦手だ。最終的に自分を本当に認めてやれるのは、畢竟自分だけだし。
主観的も客観的も当てにならない。そこら辺は有耶無耶なまま生きたっていい。そんなことも分からないから、苦しむ人はそこら中にうようよ湧いている。
それにしても、他人を刺さないと安心できない人はかわいそう。私なんかに有益な時間を空費して、もったいない。こうやって、自卑によって侮蔑する。でもこれってただの自慰だ。保身に走ってる。
まあそれでも楽しいならいいかな。終わらせるつもりも無い毎日を流れていくだけだ。水死体になるまで、ゆらゆら。