ちっこいはなし

たのしいせいかつ

普請

「あばら屋」の追伸のようなもの


F氏の諸々を受け入れる余裕がようやくできてきた。彼の名前を見かけても、もう動悸は緩やかだ。やっと悲嘆せずに彼を想えるのだ。これ程喜ばしいことが他にあるだろうか。
だから私は言う。
「あなたのそちらでの安穏が何物にも脅かされませんよう祈ります。またいつか、地上ではないどこかで、あなたの音を聴かせてください。それまではあなたが残した音をなぞって待っています。」
もう大丈夫。大丈夫。だから今はもう一つ祈る。私の昨日までのとりとめない負の電荷がF氏のところまで流れないように。他でもない私自身が彼の眠りを妨げないように。