ちっこいはなし

たのしいせいかつ

玩具箱

比喩が好きだ。
私の足りない頭は、言葉が入るスペースも少ないので、手持ちの言葉で今の感情を、どれだけ的確に表せるかを試している。そのためには比喩が必要だが、いつも突飛になってしまう。
比喩には共通認識が必要だ。「烏のように黒い」と言われても、烏の黒さを知らなければ分からない。それに「君は白百合だ」と言われても、「君」の何が「白百合」なのか分からない。要するに、認識が人とずれている上に言葉が足りないのだ。
それを活かして、「分かりそうで分からない」詩を書くのが好きだ。玄関先で対応して、応接間には入れないような詩だ。その空気の匂いだけ感じてくれたらそれでいい。でも最近悩みがある。
変な言葉を使いすぎて、どの言葉が普遍的であったか分からなくなってきた。「空が燃える」とか「夜が溶ける」とか、私の中では普遍的の域に入る。
別に、ダダイストを目指したことは一度も無いのだ。意外な言葉をパッチワークのように組み合わせて生まれる、混乱や酩酊を楽しむだけだ。玩具箱をひっくり返して、遊ぶのが一番楽しいだけなのだ。